口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十四
聞くところによると、天地が分かれず、陰陽が分かれてゐない時を混沌と名づける。萬物の靈は封じられて虚空神と名づく。また大元の神といふ。また國常立神といふ。またの名を俱生神といふ。奥深い道理、萬物の源泉をなす氣がさかんな中、虚でありながら靈がある。一であり體がない。ゆゑに廣大な慈悲を發する。自在神力において種々の形を現し、種々の心の動きに順ひ、方便利益をなす。表れた名は大日孁貴といふ。また天照大神といふ。萬物の本體であり、萬品を度すことは世間でいふ胎兒が母胎に宿るやうなものである。
また止由氣皇太神月󠄃天尊󠄄である。地と地の間、氣の形質がまだ離れてゐない状態を渾淪(こんりん)といふ。顯現した尊形を金剛神といふ。化󠄃を生ずる本性である。萬物の惣體である。金は水にも朽ちない。火にも燒かれない。本性は精明󠄃である。ゆゑに神明といふ。また大神といふ。大慈本誓(ほんぜい)のままに、人ごとに思ひのままに寶をふらすこと、龍王の寶珠の如し。萬品を利すことは水德の如しである。ゆゑに亦の名を御氣都神といふ。金と玉とは萬の物の中で効用が甚だしい。朽ちず燒かれない。壊れず汚れない。ゆゑに名と爲した。内外表裏がない。ゆゑに本性である。いふなれば、人で金神の性を受けたものである。混沌の始めを守るべきである。ゆゑに神を敬ふときには淸淨が第一である。所謂、正に從へば淸淨であり、惡に隨へば不淨である。惡は不淨の物であり、鬼神のにくむ所である。