口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十七 天平󠄃賀(あめのひらか)

天平󠄃賀(あめのひらか)。天神の訓へに從ひ、土師物忌父宇仁(うに)の埴土(はにつち)をとつて、天平瓦を造る。諸󠄃神を敬祭し、宮ごとに八十口。柱のもとや諸々の木の下に置く。これは天下泰平の吉瑞である。諸󠄃神が寶器を受け入れるのである。

 

時に大佐々(おほささ)命、乙乃古(おとのこ)命勅宣を蒙つて仕へ奉る。己酉歲󠄄。乙乃古命の次男大神主飛鳥記す。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十六 心の御柱

心御柱一名天御柱。また天御量柱。

所謂、天の四德、地の五行にかなひ、徑四寸、長さ五尺の御柱である。五色の絹を以て覆ひ、八重榊で飾り申し上げる。これぞ、伊弉諾伊弉冉尊󠄄の鎭まる所󠄃である。陰陽變通の本基である。諸󠄃神が化生した心臺である。すべて天の心に合つて、木德を興す。皇化󠄃に歸して國家を助ける。ゆゑに皇帝の曆數天下の固め。永遠に動くことなく、三十六禽、十二神王、八代龍神が常に住んで守護してゐる。損傷すれば必ず天下に危機が起こる。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十五 棟梁の文様

寶宮の棟梁の天表(あまつみしるし)の文樣

天照太神宮の形は日天尊󠄄位を象る。

止由氣太神宮の形は月󠄃天尊󠄄位を象る。

天神地祇八洲を輝かし、形體を利す。ゆゑに皇天は永遠にをられ、日月を配して地上の昏衢(こんく)を照らす。國家天地と共に天皇の御代は長久である。天眞の明道である。鬼神の變通である。人民は幸甚幸甚。

東西左右すべて四十四座。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十四

聞くところによると、天地が分かれず、陰陽が分かれてゐない時を混沌と名づける。萬物の靈は封じられて虚空神と名づく。また大元の神といふ。また國常立神といふ。またの名を俱生神といふ。奥深い道理、萬物の源泉をなす氣がさかんな中、虚でありながら靈がある。一であり體がない。ゆゑに廣大な慈悲を發する。自在神力において種々の形を現し、種々の心の動きに順ひ、方便利益をなす。表れた名は大日孁貴といふ。また天照大神といふ。萬物の本體であり、萬品を度すことは世間でいふ胎兒が母胎に宿るやうなものである。

また止由氣皇太神月󠄃天尊󠄄である。地と地の間、氣の形質がまだ離れてゐない状態を渾淪(こんりん)といふ。顯現した尊形を金剛神といふ。化󠄃を生ずる本性である。萬物の惣體である。金は水にも朽ちない。火にも燒かれない。本性は精明󠄃である。ゆゑに神明といふ。また大神といふ。大慈本誓(ほんぜい)のままに、人ごとに思ひのままに寶をふらすこと、龍王の寶珠の如し。萬品を利すことは水德の如しである。ゆゑに亦の名を御氣都神といふ。金と玉とは萬の物の中で効用が甚だしい。朽ちず燒かれない。壊れず汚れない。ゆゑに名と爲した。内外表裏がない。ゆゑに本性である。いふなれば、人で金神の性を受けたものである。混沌の始めを守るべきである。ゆゑに神を敬ふときには淸淨が第一である。所謂、正に從へば淸淨であり、惡に隨へば不淨である。惡は不淨の物であり、鬼神のにくむ所である。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十三

皇天が倭姬󠄃内親王に託宣された。「それぞれの者󠄃たち、考へてみよ。天地が大冥の時、日月星の神姿を虚空に現した時のことである。神は足で地を履み、天御量(あまのみはかり)を中國(なかつくに)に建てて、来し方行く末、全土を見られた。天照太神は悉く高天の原を統治され、天統は輝き、皇孫尊󠄄(すめみまのみこと)は專ら葦原中國を統治されて、日嗣(ひつぎ)を受けられ、聖明の及ぶところ、平󠄃らかに屬さないものはない。宗廟社稷の靈、一を得て二無しの盟(ちか)ひ、百王の鎭護は甚だ明らかである。是を以て、人は天地に基づき命を續け、皇祖󠄃を祀り、德を示し、その根源を深く知り、祖󠄃神を敬ふ。四方の國より朝貢して来る者󠄃に天位の貴きことをみせしめ、大業を弘め、天下を明󠄃るくする。そもそも、天に逆らへば道󠄃なく、地に逆らへば德がない。本居から追ひ出され、根國に没落する。情を天地に齊しくし、思ひを風雲に乘せれば、道󠄃に從ふ本と爲る。神を守る要と爲る。澤山云はれてゐる雜說󠄁を除いて一心の基準を挙げ、天命を割り當て、神の氣を經驗し、理實は灼然となる。ゆゑに神を祭る時は淸淨を先とし、我が鎭めに一を得ることを念とする。神主部、物忌たちよ、諸󠄃祭の齋みの日には穢れ、惡事に觸れてはならない。佛法の言葉を用ゐない。肉を食べない。また神甞會の日に至るまで、新米を食べない。常に心を静謐に保ち、愼しみ掌を攝し敬拝し、齋み仕へる。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十二

また、神嘗祭の夜、宇賀魂の稻の靈を、初めて天つ水田の稻種の初穂を供進󠄃し、(赤丹穗にかむかひに)永遠の御饌と大神の廣前に山のやうに置き、讃える言葉を盡してお祭りした。天神がおつしやられた。「口女魚(黒鯛)と海鼠(なまこ)を供進󠄃してはならない」今に續くしきたりの起源である。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十一 日別朝󠄃夕大御饌祭

天照皇太神の御前󠄃に、御飯二八具、御水四もひ、御鹽(しほ)四杯、諸々の御贄類、御河の年魚等をお供へする。

止由氣皇太神の御前に、御飯二八具、御水四もひ、御鹽(しほ)四杯、諸々の御贄類、御河の年魚等を御供へする。

相殿神の御前に、三八具、御水六もひ、御鹽(しほ)六杯、諸々の御贄、年魚等をお供へする。

神主や物忌たちが祝詞を奏す。朝󠄃廷、天皇を永遠に堅固にお守りし、官人として仕へる人々、天下四方の國民に至るまで、平󠄃安にお恵み下さい、と申し上げ、拝み奉ります。天照太神に八度、止由氣太神に八度、伴󠄃相殿神に八度拝んで、天つ御量事(みはかりごと)靈妙な守りの言葉を以て寿(ことほ)ぐ。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その二十 

これ以降、但波眞井石井(たにはのまなゐのいはゐ)に鎭(しづ)め移(うつ)した。水戶(みと)の神が仕へ奉つた。その後、眞井の原より止由氣宮の御井に遷し据ゑた。二所󠄃皇太神の朝の大御饌、夕の大御饌と八盛󠄃りに移し据ゑて、每日二度供進󠄃した。凡そ、この御井の水は干上がることがなく常に湧き出る。不思議なことはこの社以上のことはない。御饌以外のことに使つてはならない。また道主の子孫の大物忌の父が御井を清掃する。また、御井と御炊殿(みかしどの)との間の距離は百二十丈である。橋が十五丈である黑木丸橋。これは月ごとに修理し清掃する。雜人たちは通らず愼みてお仕へする。また天照太神が坐す南御門の御河の中嶋に、石畳を造り奉りて、黑木を以て御橋を渡し奉つて、止由氣太神の大御饌、伴󠄃神の御饌を供進󠄃した。三節󠄄祭ごとにこの橋を封鎖して、人は渡ることが出来なくなるので、潔齋をしてつつしんでお仕へした。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その十九 天村雲命の活躍二

御祖󠄃の天照皇大神、天御中主皇大神、正哉吾勝尊󠄄(まさやあかつのみこと)、神魯岐(かむろぎ)神魯美(かむろみ)尊󠄄が相談されて、おつしやられた。「様々な政治に必要なことを敎へたが、水取(もひとり、飲み水)のことをもらしてしまひ、また天下が飢餓に苦しむことになつてしまつた。どの神を天降りさせようかと考へてゐたが、丁度勇ましく登つてきたものだ。」とおつしやつて、天忍󠄄石(あまのおしは)の長井の水を取つて、澤山盛つて敎へられた。「この水を持つて降り、皇大神の御饌に八つ奉り、『遣水は天忍󠄄石の水』とおまじないをして、地上の國の水に灌(そそ)いで、朝夕の御饌に奉れ。」そこで、日向の高千穂(たかちほ)宮の御井を定めて崇拝し、奉仕した。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その十八 天村雲命の活躍

御井水は天孫降臨以來、天村雲命が琥珀の鉢で管理されてゐる。金剛夜叉神の變化(へんげ)するところである。徑一尺八寸。天降られて留まつてゐる。守護のために七星、十二神が羅列してゐる。光明は明星のやうである。皇太神、天孫が天降りされた時、天村雲命御前󠄃に立つて天降つてゐた。その時に、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天村雲命を召しておつしやられた。「地上の國の水はひどく荒󠄃い水で飲めたものではない。御祖󠄃の天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)の許に參上して、このことを傳へてきなさい。」そこで天村雲命は、高天の原に參上して、天孫の御祖󠄃である天照大神、天御中主皇大神の前に行つて、天孫の言はれたことを詳細に傳へた。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その十七 外宮先祭の託宣

天照皇太神重ねて託宣された。「わが祭りに奉仕するときは、先に止由氣皇太神宮(とゆけのすめおほかみのみや)を祭れ。その後にわが宮の祭祀に奉仕せよ。」故に諸󠄃祭は止由氣宮が先なのである。また止由氣太神一所󠄃が御鎭座の時に占ひをさせて、雄略天皇が詔(みことのり)された。「己の宗とする神の續柄に基づき、神皇產靈神の子孫大佐々命(おほささのみこと)に二所󠄃皇太神宮の大神主職を兼ねて奉仕させよ。」

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その十六

また天神のをしへに隨ひ、土師(はじ)氏を物忌職として、天平󠄃瓫(あまのひらか)はじめ諸󠄃土器類を造つて供進した。また開化天皇の御孫丹波道󠄃主貴の子孫の八少女に寶殿の御鑰(みかぎ)を下賜して、寶殿を開かせた。また素戔嗚尊󠄄の子である氷沼道主(ひぬのみちぬし)またの名は粟御子神であり、またの名は大己貴神。またの名は大國魂神。またの名は大國主神。古くは大國魂の神の名を宇賀靈(うがのみたま)といつた。大辨財天子、つまり御饌都神である。御竈神(かまどのかみ)、火の神嚴香來雷(いつのかぐつち)水戶神嚴罔象女(いつのみづはのめ)薪の神嚴山雷(いつのいかづち)を率ゐてご飯を炊(かし)ぎ、澤山奉つた。今、御炊物忌の父子といふ所以である。舂女、炊女である。また度會川の川邊に一人の漁師がゐた。名を天忍󠄄海󠄃人(あまのをしをのあまひと)といふ。今掃守(かもん)氏といふ。年魚を取つて神饌に供へた。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その十五 

天皇は倭姬󠄃命に詔された。「男の弓弭(ゆはず)の物は、大刀、小刀、弓矢、楯鉾、鹿皮角、猪皮、忌鍬、忌鋤の類である。女の手末の物は、麻桶、綿柱、天機具、荒󠄃妙衣、和妙衣、荷前󠄃(のさき)の御調(みつき)の類である。天地が生み育んだものを用意し、宗廟の祭りにお供へする。これは仁恩の忠孝である。信が德である。ゆゑに神は德と信とを受けられるが、備へ物を求められないのである。すなはち、神寶を納める。兵器を占つて神財とする。また更に神所󠄃と神戶を定めて、二所󠄃太神宮の毎日の朝󠄃夕のお祭りにお供へする。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その十四 神楽の起源

神樂の起源であるが、昔素戔嗚神(すさのをのかみ)が日の神に對して甚だしい無禮の數々を行ひ、天照大神がお怒りになり、天岩窟(あまのいはと)に入られて、磐戶(いはと)をとぢられて、隠れられた。そして國中が晝(ひる)と夜の別も無くなつてしまひ、神々は憂へ惑はれ、手足の置き所󠄃もなくなり、何をするにも火を灯さなければならない状態に陥つた。天御中主神(止由氣皇太神のことである。)の御子の高皇產靈(たかみむすひ)神が命令されて、八十萬神(やそよろづのかみ)は天八湍河原(あめのやすのかはらに)(天の川のことである。)に集まつて對策を考へられた。

 

天岩窟の前に庭火をあげて、歌舞し、猿女君の祖󠄃神天の鈿女(うずめ)命が天香山(あまのかぐやま)の竹をとつて、その竹の節の間に穴をあけて、和気を通はせた。今の世に笛といふ類である。また天香弓(あまのかごゆみ)を縦に並べて、弦をはじいた。今の世に和琴といふ。そのいはれである。木と木を合はせて打つて安樂の音を備へた。和風を移し、八音を顯はし、猿女神は手をひろげ、聲をあげて、或は歌ひ、或は舞つた。淸淨の妙音を顯はし、神樂の曲調を供した。

 

この時、たちまちに神の怒りは解けて、妖氣は晴れて、亂れはをさまり、それ以來、風雨時に隨(したが)ひ、日月も順調に運行した。一陰一陽萬物の始めである。一音一聲は萬の樂の基である。神道󠄃の奧深さ、天地の靈妙である。管弦の要󠄃は、八音につき、それだけで貴いのである。だから、先祖󠄃の活躍により、猿女氏が來目命の子孫の屯倉の男女を率ゐて、神代の事績を今に再現するために、三節祭に奉仕するのである。これは永遠の慣例である。

口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その十三 

宮人はみな參り一晩中宴を催した。猿女の祖󠄃天鈿女の子孫が歌ひ手となり踊子となつた。來目命の子孫屯倉の男童が笛を吹き、琴を彈き、笙を吹き、篳篥を吹いた。全員が共に歌ひ舞つた。樂器の音は冴て、全土に廣がつた。天地の神々はのどかな陽氣を受け、實直に隨つて天下は榮え、國内は平和となつた。