口語訳 現代語訳 神道五部書 御鎮座伝記 その十四
倭姬命と大田命とは、幣帛を澤山積んで、朝廷の御位が長久で岩の樣に堅固なものにとお祈りし、生き生きとした御代でご多幸であれと、高天原の神慮による靈威な詞で、諸々の穢れを忌詞(いみことば)と定められて、大神主大佐々命(おほささのみこと)や物忌荒󠄃木田酒女(さかめ)押刀(おしと 酒女の子)等に敎へた、とおつしやられた。物忌(ものいみ)の名はかうして起つた。
神代からの靈物の裝ひを猨田彦神がつつしんで申し上げませう。抑々天地開闢の後、萬物が全て具はつたといつても、渾沌の前にはその闇を照らすものはなかつた。よつて、萬物の化成はある樣であり、無きに等しかつた。さうして時が經てば經つほど、自然と尊嚴は失はれ、下卑ていつた。その時に、國常立尊がお生みになられた神が、高天原の神慮を受けて、地中の上等な白銅を撰び集めて、地の神、水の神、火の神、風の神々の協力をうけて、三才(天地人)相應の三面の眞經津鏡(まふつのかがみ)を鑄造された。故にこの鏡を鑄造した神を天鏡命(あめのかがみのみこと)と申し上げる。その時神明の道は出現し、天文も地理もはつきりと現出した。
また、劍大刀子小刀子は地中の洗練された金屬から龍神がお造りになられた。弓矢天照太神の相殿の神である。は轉輪王(てんりんわう)の造られたものである。陰陽を表はす。故に天之香子弓(あめのかこゆみ)、地之羽々矢(つちのははや)と名づけられた。玉は日の神、月の神の光の麗しさを表はす。笏は天の四德(元亨利貞)と地の五行(水火木金土)とを表はす。自然の德を表はしてゐる。神物は皆この樣に靈妙である。これらを私に臧する事の出來る者はゐないのである。