口語訳 現代語訳 神道五部書 御鎮座伝記 その十

豐受皇太神一座。

 

天地開闢の初めに、高天原に神が御出現なされた。ある本によると、伊弉諾尊大自在天伊弉册尊と申す。古くは伊舎那天伊舎那天妃と申す。二神は先づ大八洲(おほやしま)を御生みになつた。次に海の神水天童子難陀竜王を生み、次に河の神を生み、次に風の神風天童子を生まれた。それ以降一萬年以上經つたが、水德が御出現されず、地上は飢餓に苦しんだ。そこで二柱の神は、高天原の御考へを受けて、瑞八坂瓊之曲玉を天に捧げた。その時に成り出でた神がをられた。名づけて止由氣(とゆけ)皇太神と申し上げた。樣々に變化されて、水の德を受けられて、命を續ける術を生み出された。故に御名を御饌都神(みけつかみ)と申すのである。

 

古い傳へでは、大海の中に一つの物が有つた。水の中に浮かんでゐるその形は葦の芽󠄄の樣であつた。その中に神がお生まれになつた。天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)と申し上げた。故にその神の生まれられ、統治される所を豐葦原中國(とよあしはらのなかつくに)と申すのである。またさういふ譯で、止由氣皇神(とゆけのすめがみ)と名乘られた。

 

さういふ譯で、天地開闢の初め、天照大神が天位におつきになられた時、御饌都神の天御中主尊と大日孁貴であられる天照太神とは、豫め、我々の知り得ない秘密のお約束をされて、長く天下を治められて、或いは日となられ、月となられて、長く空に坐して、落ちてくることもなかつたのである。或いは神と成られ、皇祖となられて、永遠に滅びることがないのである。盛德はいよいよ光輝を放ち、天地四方を照り輝かせられるのである。