口語訳 現代語訳 神道五部書 豊受太神御鎮座本紀 その三

この時、天照皇太神と止由氣大神とは、輝きを合はされ、德󠄀をひとしくされてをられた。天上のよそほひの樣󠄂に一所に二座竝んでをられた。和久產󠄀巢󠄀日(わくむすひ)神の子の豐󠄀宇可能賣󠄀(とようかのめ)命、屋船稻靈󠄀神である。五穀を產󠄀んで、善󠄀い酒󠄀を釀し、御󠄀饗󠄀した。御󠄀炊󠄀(みかし)神である氷󠄀沼道主(ひぬのみちぬし)素戔嗚尊の孫である。またの名は粟󠄀御子神である。今の世に御󠄀炊󠄀物忌といふのは、このためである。三十六柱の竈(かまど)神を率ゐて、朝󠄀の大御氣、夕の大御氣を炊ぎ備へて御󠄀饗󠄀申上げた。丹波道主貴(たにはのみちぬしのむち)大日日(おほびび)天皇の子の彥󠄀坐󠄀(ひこいます)王子の子である。今の世に大物忌子といふのはこのためである。御󠄀杖代󠄀となつて、澤山の机に品々を供へて、神甞を奉つた。諸神が作られた神を祭る物、五穀が旣󠄀にととのひ、百姓は賑やかであつた。その功績が御濟󠄀みになると、天照大神は伊勢へと向かはれた。止由氣大神は高天原に戾られて、日之小󠄀宮(ひのわかみや)にをられた。その時、天津󠄀水影󠄀(あまつみづかげ)乃寶󠄀鏡を吉佐宮に留めおかれた。天地開闢の折、萬物は旣󠄀に備はつてゐたが、混沌の元を照らす物なく、ゆゑに萬物の化はある樣󠄂でなかつたのである。さうして時が下るにつれて、自づから尊さを失つたのである。時に國常󠄀立󠄀尊󠄀のお生みになつた神が、天󠄀の御󠄀量事󠄀により眞󠄁經󠄀津󠄀(まふつ)の寶󠄀鏡󠄀三面を鑄造された。まことにこれは自然の靈󠄀物であり、天地は感應した。この時に神明の道は明らかになつて、天文地理が自づと存在する樣󠄂になつたのである。ゆゑに鏡を作られた神を天󠄀鏡神と申すのはこのためである。そこで、天津神籬を魚井原(まなゐはら)に立てられ、黃金の樋󠄀代に祕藏した。道主貴、八小童󠄀、天󠄀日起󠄀命、豐󠄀宇可能賣󠄀命は御饌をそなへ、齋󠄀祭つた。その時に、高貴(たかぎ)大神が神勅を下された。「皇孫命の靈󠄀を大󠄀祖止由氣皇太神の前の社して崇󠄀めるのがよい。云々」。そこで相殿の神とした。御神體は鏡である。皇孫命は金の鏡である。