口語訳 現代語訳 神道五部書 御鎮座伝記 その十三

相殿神三座左は天津彥々火瓊瓊杵尊(あまつひこひこほのににぎのみこと)。大八洲(おほやしま)の主である。右は天古兒屋命と太玉命とである。各々天神地祇の中で、特に皇孫に忠義を盡される神である。

 

多賀宮一座止由氣皇神(とゆけのすめがみ)の荒御魂である。伊弉諾尊が筑紫(九州)の日向の小戸橘之檍原(をどたちばなのあはぎはら)に到達されて、禊をされた時に、左の目を洗はれて日の神が誕生された。これが大日孁貴である。地上に降られてからは天照太神の荒御魂、荒祭神と申し上げる。また右目を洗はれて月の神が誕生された。地上に降臨されて御名を止由氣大神の荒御魂、多賀宮と申し上げる。また、鼻を洗はれたことでお生まれになつた神の御名は、速佐須良比賣神(はやさすらひめのかみ)と申し上げる。土藏の神である。素戔嗚尊と協力されてをられる。多賀宮は伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)である。祓戸の神である。天照太神の第一の攝神である。神の御さとしにより止由氣宮の傍に坐す。

 

山田原地主大土御祖神二座大年神の子大國魂神(おほくにたまのかみ)の子である宇賀之御魂神(うかのみたまのかみ)一座。素戔嗚尊の子土之御祖神(つちのみおやのかみ)一座。また衢神(ちまたのかみ)大田命。寶石の御神體が一つ坐す。これは神の財である。

 

調御倉神(みつきのみくらのかみ)宇加能美多麻神(うかのみたまのかみ)である。この神は伊弉諾伊弉册尊の御生みになられた神である。別名を大宜都比賣神(おほげつひめのかみ)と申し上げ、また保食神(うけもちのかみ)とも申し上げる。神祇官八神殿の御膳神(みけつかみ)である。また神服機殿(かむはたおりどの)でお祭りする三狐神(みけつかみ)が御同座されてゐる。故にまたの御名を專女神(たうめのかみ)と申し上げる。齋王を專女と申し上げるのは、かういふいはれである。また稻の靈宇賀能美多麻神(うかのみたまのかみ)である。

西北の方に尊んで祭る。御神體がある。それぞれ一座。

 

酒殿いはゆる伊弉諾伊弉册尊がお生みになられた和久産巢日神(わくむすひのかみ)の子豐宇賀能賣神(とようかのめのかみ)である。別名は姮娥(こうが)と申す。また羿女(げいじよ)とも申す。月より天下られた。能く酒を釀(かも)されて、一杯飮めば萬病を除くと云はれてゐる。その一杯の値は千金である。財寶を車に積んできて交換したものだ。今神の酒といはれる。幣帛使は齋宮の三節祭の時の宴會の夜に酒立女(さかたちめ)に下賜するのはかういふ所以である。また、丹波國與謝郡比沼山(ひぬやま)の頂上に井戸があり、その名を麻那井(まなゐ)といふ。ここに神がをられる。竹野郡の奈具社である。故に豐宇賀能賣神は御神體が靈石である。また、酒を造るための𤭖(みか)が一つある。大神の靈妙な器である。よつて敬ひ祭つてゐる。古くは吉祥を𤭖の腹甘露酒で滿たす、といつた。名づけて神酒といふ。三節祭(六月十二月の月次祭、神甞祭)に獻上する。

 

以上、止由氣太神、別宮等、諸社、四至之神(みやのめぐりのかみ)等、皇大神宮に準じてお祭りしてゐる。故に日の神は東南に坐し、月の神は西北に坐す。およそ兩宮は日月を表はし、伊勢の諸社は星々を表はしてゐる。