口語訳 神道五部書 御鎮座次第記その十六 相殿その二

外宮正宮の中の右には、二座の神が鎭座する。まづ天兒屋命(あめのこやねのみこと)である。御神體は笏(しやく)であり、牙(きば)の形をしてゐる。また、丸い玉が一つ、榊(さかき)が二枝ある。

 

天の岩戸開きの時、天兒屋命が祝詞を奏上し、祈禱(きたう)したときに用ゐられた笏と榊とである。

 

次に太玉命(ふとだまのみこと)である。御神體は瑞八坂瓊之曲玉(みづのやさかにのまがたま)である。圓形(ゑんけい)の箱にお納めしてゐる。この曲玉は天忍穗耳尊(あめのおしほみみのみこと)がお生まれになつた玉である。またこれは、天の岩戸開きのときに、榊に澤山(たくさん)つるした曲玉でもある。(つづく)

 

解說

 天兒屋命は中臣氏の先祖であり、太玉命忌部氏の先祖である。瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の天孫降臨の時に地上に來られ、長く朝廷の神事を司る家系であつた。天照大神が天の磐屋(いはや)にこもられた時、天兒屋命は祝詞を唱へ、太玉命依代(よりしろ)の榊を用意された。天兒屋命の御神體はその時登場する品々である。

 

太玉命の方は、まだ說明は途中であるが、御神體は八坂瓊の曲玉である。

 

天忍穗耳尊とは、天照大神の御子で、天孫瓊瓊杵尊の御父である。この神は、天照大神と素戔嗚尊との占ひの時に生まれた神である。素戔嗚尊高天原に來られた時に、天照大神が素戔嗚尊高天原侵掠を疑はれ、素戔嗚尊はそれを否定してもめられた時に、占ひで決めることとされた。

 

天照大神は素戔嗚尊の劍をかみ碎かれて、息を吐いて三柱の女神を産まれた。一方、素戔嗚尊は天照大神の持たれてゐた曲玉をかみ碎かれて、息を吹き五人の男神を産まれた。結果、素戔嗚尊が正しかつたといふことが證明されたさうである。

 

天照大神の所持されてゐた八坂瓊の曲玉を素戔嗚尊がかみ碎かれて吹いた息から御誕生された五柱のうちの一柱が天忍穗耳尊である。そのかみ碎かれた曲玉は、天の岩戸の時には榊に掛けられた。それが、この太玉命の御神體である。